2016年4月4日月曜日

読了だったり、『還るべき場所』


ここ数年、忙しさのあまり縁遠くなっていた本を読むという行為。

忙しさだけでなく、ブログを書いたり読んだりSNSをしたり、そんなことに
時間を取られていたのかも?


今年に入ってそんなスマホライフを少しだけペースダウンして、本を読むことを再開した。

やっぱりイイナ、スマホライフでは得られないものがある。


ということで、『還るべき場所/笹本稜平』読了。


この著者の著作を読むのは初めて!

数年前に購入していながら、600ページ超という大作故に、
なかなか読み進めなかった一冊。

読み始めは著者独特の回りくどい表現が気になってしかたなかったが、
読み進めるていくとストーリーに引き込まれて一気に読んでしまった。

あえて分類するなら山岳小説になるのだろうが、推理小説的な要素もあり、人の生き様を考えさせられる部分もありでなかなかの良書であった。

この著者の別の著作も読んでみたいと思わされた。
ちなみ比較的若い作家かと思いきや、自分よりも結構上の世代だった。


(自分メモ)
還るべき場所 190
人間は夢を食って生きる動物だ。夢を見る力を失った人生は地獄だ。夢はこの世界の不条理を忘れさせてくれる。夢はこの世界が生きるに値するものだと信じさせてくれる。そうやって自分を騙しおおせて死んでいけたら、それで本望だとわたしは思っている。

還るべき場所 291
欲得ずくでも人は動くが、魂の力で動く人間がいちばん強い。・・・。死後の魂の存在を信じているわけではないが、ときとして死んだ者の心は生きている人間の心を深いところで突き動かすことがある。

還るべき場所 310
そもそも人生というのはつまらんものだ。若いうちなら勢いで突っ走れる。なんにでも夢中になれる時期がある。それがそのうち惰性になり、世間のしがらみに絡めとられて、なにか面白いのかわからなくなる。しかしな、本当の勝負はそこから始まるんだ。つまらん人生に花を咲かせるのが本当の才覚で、モチベーションが希薄になったなんて愚痴を言っているうちはまだ半端者だ。砂漠のような人生に大輪の花を咲かせることのできる人間こそ一流だ。

還るべき場所 315
山が人を惹きつける理由については・・・。『山がそこにかるから』というマロリーの言葉は、たぶんその答えではなく、それが回答不能な問いであることを示したにすぎないものです。それは言葉てはなく、生きることによってしか表現できないなにかなんです。

誰もが山に惹かれるわけじゃない。しかし現実の山じゃなくても、誰もが心の中に山を持っている。それは言葉では定義できないが、どんなに苦しくても、むなしい努力に思えても、人はその頂を極めたいという願望から逃れられない。

還るべき場所 553
この体で、心で、自分がこの世界に存在している意味を味わい尽くしたいからだ。苦しいのはもちろんだが、確かに感じてもいる。この世に生を享けたことがどんなに喜びに満ちたものかをね。

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